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3 月号 『 不況に備える7つの心構え 』 Ⅴol.133

   3 月号 『 不況に備える7つの心構え 』 Ⅴol.133



 みなさん、こんにちは!今月の徒然日記を投稿いたしたいと思います。



 いやー、何とも大変な事態になってきましたね!先月の投稿の中で、新型コロナウィルスについて警鐘を鳴らしていましたが、ここまでひどくなるとは誰も予想していなかったのではないでしょうか。人的被害もそうですが、経済的被害も株価の大暴落など、全世界を震撼させております。

 



 さらにリーマンショックの時のように、単に金融システムの崩壊に収まらず、ヨーロッパ中心に医療の崩壊、社会システムの崩壊にまで拡がっております。イタリア・フランスの酒屋さん、どうなっていくんでしょうかね。そして他人ごとではありません、我々の商売においても当然悪影響を受け、深刻さが日に日に高まってきております。



 お得意先の居酒屋さんでお話しさせていただいても、毎年この時期になると、お客さんが会社帰りにプロ野球ナイターを見がてら、一パイ飲みに来店してもらえるのに今年はサッパリ・・・。年度末での団体宴席も毎日、キャンセルの電話が恐ろしい!といった具合で、例年なら3月末は春の選抜高校野球に始まり、プロ野球開幕と続き、同時に桜の花が一斉にあちらこちらで満開!世の中が自然とパアーと明るく華やかになるのに、今年はなんとまあこの沈滞ムードと閉塞感・・・。



 これも一過性のものであれば、その先の回復を見込んで頑張れるんですが、これまた不透明で不安材料ばかりであります。東京オリンピックも来年に延期という事で今後も混乱が続くことになります。



 国内競技であればまだしも、国際競技である以上、仮に夏までに日本国内が終息しても、ヨーロッパに続き、アメリカ、そしていよいよインド・アフリカ大陸に波及していけば、『パンデミック』 という言葉で表現する以上に危機的な状況が現実化していく事になります。スポーツどころの騒ぎではなくなってまいります。

 



 本当に厄介なことに、日本にとって、最悪のタイミングで 『 世紀の祭典 』 に水を差す悪性ウィルスが出現してしまいました。かつてオリンピック誘致活動に始まり、開催決定、そしてその開催準備に奔走された関係者の方々においては、誠に断腸の思いでいっぱいでありましょう。



 ただそれ以上にお気の毒なのは、バス会社や観光に携わる業者の方々、そして我々にも関係する飲食業の経営者の皆さんの先行き不安であります。この状態が今後さらに続けば、『 倒 産 』 という言葉が、街のあちこちで聞くことになってまいります。



 そのような深刻な事態にならぬよう自店も含めて、今から対策を講じていかなくては と思い、久しぶりに京セラの名誉会長 稲森和夫氏の書籍を引っ張り出しまして関係する文面を探してみました。そこで、氏の 『 不況に備える7つの心構え 』 なるものを読み返してみました。



 内容的には、我々零細小売業と違い、大企業そして、もの作りいわゆるメーカーとしての観点で列記されていますので全てが当てはまるかというと、そうではない部分がありますが、参考のためご紹介したいと思います。長文になりますが、お時間のおありの方は読んでいただきたいと思います。



 恐縮ではありますが、各項目ごとに私なりに自店に当てはめた注釈を入れていますので、それもご覧いただければと思います。



 



 企業は不況を境に体質を強化し、次の飛躍に備えることで発展していくのです。不況が厳しければ厳しいほど、明るくポジティブな態度で、全員一丸となって創意工夫を重ね、努力を傾けて難局を乗り切ることが大切です。

不況に遭遇したとき、従業員が結束して努力をすることによって、ひとつの「節」がつくられていきます。それは竹の節のようなものです。

好況のままスッと成長していけば、単調な成長となっていきますが、不況の度に全従業員が結束し、ひとつになって頑張ることによって、次の飛躍の足がかりとなる「節」が作られていくのです。そうした「節」が多いほど、企業は立派になっていくのです。



我々酒屋業界も酒販免許の自由化や大手小売業の新規参入など近年厳しい環境下で何とか営業してまいりました。日々、自然災害や人的な外圧などの繰り返しの中で人々は谷底へ突き落されてしまいます。

経済活動でいえば、それが 『不況』 と呼ぶのでしょうが、大事なのはそこから這い上がる気力と努力 がどれだけあるのか、残されているのかという事であると思います。

そのふるいをかけられている中で残ったものだけが次なる喜びや存在意義を享受できるのだと思います。いわゆる 『 生存者メリット 』 であります。そしてその後、人もお店も心身ともに次なる成長を遂げるのだと思います。小さくとも筋肉体質でありながら、頭の柔らかいお店作りを目指しましょう!



 

 不況への対処として最も大切なことは、普段から高収益の経営体質を作り上げておくことです。

高収益であるということは、不況になって売上が減少しても、赤字に転落しないで踏みとどまれる抵抗力があることを意味します。私はよく、「営業利益10%くらいの利益率が出せないようでは、経営のうちに入らない」と言っているのですが、高収益は不況への最大の予防策なのです。

また、高収益企業であれば、内部留保が増加してくるので、不況が長引き利益が上がらない状況が続いても、耐えることができます。さらに余裕資金を使って、不況で普段より安くなっている設備を購入するなど、思い切った設備投資もできるのです。
経営とは、不況で追い詰められてから頑張るものではなく、かねてから高収益になるように全力を尽くしておくべきものなのです。



我々酒屋業界は、メーカーと違ってなかなか高収益構造にもっていくというのは至難の業であります。何故ならメーカー・問屋さんから仕入れたものを消費者に対して右から左へと商品供給しているだけのことですから、そんなに利ザヤは取れないのが現状です。

ただ日本の人口が減少していく中で営業し続けるのには、売上からくる利益額よりも、利益率からくる利益額にバランス移行していかなければなりません。そんな訳で、至難の業と言っても稲森氏が提言されるように高収益体質を目指すのは生き残りのための必須条件となってまいります。

そして利益率を高めるためには、利益率の高い商材にチャレンジしなければなりません。それともう一つ、従来の商材に『付加価値 』 をプラスすることを考えてみる必要があります。前者も後者も、付加価値無くして高収益の実現はあり得ません。

従来より、ドリーム酒匠米匠チェーンが取り組んでいる 『 店頭精米 』 や 『 まちギフト 』 などの高収益商材で今後とも積極的に営業活動を展開してまいりましょう。



 

 どの職場でも、日頃いろいろなアイデアを持っているはずです。不況時こそ、そのアイデアをお客様に持っていってそのニーズを喚起することを、全社員で行うのです。

営業や製造、開発はもちろん、間接部門にいたるまで、全員が一丸となって、アイデアをお客様へ提案し、受注へと結びつけ、納入まで行う。そのようなことを通じて、お客様から喜ばれるだけでなく、自分自身も部内だけでなく全体がみられるようになります。

営業の手伝いで単に走り回るというのではなく、自分たちの日頃のアイデアを商品にして売るということを考えるべきです。



全員で営業する と言っても毎日お母ちゃんと二人で一生懸命営業している訳ですから、ここらは大企業と違って我々は現場で常にお客様と接して働いております。ただ氏がここで提言されているのは、『 現場第一主義 』 という事であると思います。常にユーザーであるお客様と触れ合う機会をもち、そこから顧客ニーズを入手し、次なる新サービスやお客様満足のためのアイデア創出につなげることが大事であると思います。



 

 不況のときには、忙しさにまぎれて着手できなかった製品や、お客様のニーズを十分に聞けていなかった製品を、積極的に開発しなくてはなりません。それも技術・開発部門だけでなく、営業、製造、マーケティングも協力して全社一丸となって新製品の開発を進めていくべきです。

不況時には、お客様にも時間の余裕があり、また何か新しいものを求めているはずです。そのときに積極的にお客様をまわり、新製品のアイデアやヒント、あるいは今までの製品に対する要望やクレームなどをよく聞いて、それを持ち帰り、新製品開発や新市場創造に役立てるのです。



上記3.とかぶるところがありますが、ここでいう新製品開発の意味するところ、我々にとっては新サービスの開発 といったところでしょうか。例えば、今回の新型コロナの件で外出を極力避ける「巣ごもり族」の広がり を受けて、即配の冷しビールや日本酒・お米など宅配サービスを情報発信して強化することもピンチをチャンスに変える考えではないでしょうか。そのようなアイデアをみんなで考えていきましょう。



 

 不況になると競争が激化し、受注単価も受注数量もみるみる下がっていきます。そのなかで採算を改善するためには、受注単価の下落以上に原価を下げなくてはなりません。しかし、それは簡単にはできないことだと考えがちです。そのときには、「もうダメだと思った時が仕事のはじまり」と思って必死に考え、改革するのです。

「現在の方法で本当によいのか。もっと経費を削減できる方法はないか」と改めて従来のやり方を問い直し、思い切って変革することが大切です。旧態依然とした製造方法の見直しや、不要な組織の統合など、徹底的な合理化、原価低減を断行するのです。

こうして不況時に抵抗力をつけていれば、景気回復時にはたちまち利益が出始め、すばらしい高収益企業となれます。不況のときに原価を下げ、安い値段でも利益が出るような体質に改善しておけば、景気回復時に一気に大幅の利益が出始めるのです。



『 利は元にあり 』 と松下幸之助さんもおっしゃっていますので、確かに上手に仕入することは大事であると思います。ただ、買い叩くようなやり方は良しとしません。特に卸業者と我々小売り業者との綱引きの中でやり取りされる訳ですから、その力関係の中で自ずと原価は決定されます。

今の酒販業界において「原価を徹底的に引き下げる」 という事は、かなり難しいですので、どちらかと言えばいかに経費を削減するか という事になります。さらには、難易度は増しますが、原価が下がらないのであれば、売価を上げる工夫が自店で出来るかどうかであります。そうすると収益性は高まります。ただし、そこには価格が高くなっただけの理由・根拠、いわゆるお客様から見た付加価値がその商品にプラスされているかどうか、そこの大事さをみんなで考えていきましょう。



 

 不況で注文が減り、つくるものも減ってきたときに、少ない仕事を従来通りの人員で生産すれば、製造現場の生産性は下がり、職場の空気がたるんでしまいます。

そのような場合には、つくるものが減った分だけ製造現場で余ってくる人員を生産ラインから切り離し、工場の整備や勉強会など、景気が戻ったときに備えた仕事をしてもらう。

そして製造現場では、常に一番忙しいときと同じように、必要最小限の人員で緊張感を持った仕事をしてもらう。そのようにして、それまでたいへんな苦労をして向上させてきた生産性を維持していくことが非常に大切なのです。



我々の現場で人事生産性が一番高い時期は、7月と12月であると思います。という事は、その繁忙期以外の月、例えば1~3月では、決して生産性が高いとはいえません。ご夫婦で営業されているお店では、ヒマな時期は骨休めとしてゆっくりしようかとなりますが、正社員がおられるお店では労働時間に非効率が生じ、生産性が低下します。そんな時、空いた時間を商品知識や接客技術の向上のための勉強会やスタッフ会議など第二領域の仕事を加えていくと通常業務の生産性は低下せず、またスタッフのスキル向上のため繁忙期にはさらにバージョンアップした業務が遂行されます。常に生産性を意識した経営が大事だと思います。



 

 不況という苦しい局面を迎えたときに、職場や企業の真の力が問われます。本当に苦楽を共にできる人間関係ができているのか、そうしたものを大切にする職場風土、苦労を分かち合える社風ができているのか、などが正面から問われるのです。

不況は職場の人間関係を見直し、再構築する絶好の機会ととらえて、さらにすばらしい職場風土をつくるために努力することが大切です。

このようなことは容易にできることではありません。力を合わせなければならないときに限って、従業員の不平不満が爆発するものです。しかし、そのときには嘆くのではなく、それが自分のこれまでの経営だったのかと謙虚に反省し、改めてすばらしい人間関係を構築していくことがたいへん大事なことだと、私は思います。



稲森氏がおっしゃるようにお店や会社が危急存亡の折には、スタッフ一丸となってその危機を乗り越えていかなければならないのですが、往々にして人間苦境に陥ると原因や責任を周りに転嫁していきます。経営者は、従業員がしっかりしないから、こうなってしまったとか、従業員は、経営者がアカンタレだから会社がダメになったと考え、だから転職を考えながら、取り敢えず今の仕事をしている。

これが最悪のパターンであります。じぁ、どちらが悪いのかと言いますと、全て『経営者の責任』であると思うのです。

『お客様満足』を提供するのは、働く従業員の方々です。『従業員満足』のないお店や会社に『お客様満足』はあり得ないのです。結論として、お客様を満足させれないお店は不況になるとすぐに潰れます。

『良いことは働くスタッフのおかげ、悪いことは、全て経営者の身から出たさび』人間関係を大切にしながら、この難局を切り抜けていきましょう。





 という事で、長々と書いてまいりましたが、稲森氏の7つのコメントの中で一つからでも自店の課題として取り組んでいただき、今後ますます長引くであろう
『 不 況 』 に対処していただきたいと思います。

そして共に “ ピンチをチャンスに変える! ” という強い思いをもって今後の業務に精進していただきたいとお願い申し上げまして今月の投稿を終えたいと存じます。



      今月もご覧いただき誠にありがとうございました。



【参考サイト】稲盛 和夫 OFFICIAL SITE (最終閲覧日:2020年3月25日)

 https://www.kyocera.co.jp/inamori/special/prepare/